僕なんかはただの馬齢を重ねたおっさんで、諸先輩方から見ればケツの青い甘ちゃんです。
そんないい加減な僕でも落ち込むことがあります。
それは人が辞めた時です。
自分自身の力の無さを痛感します。無力感を感じます。
大事なお子さんを、このような業界に送り出すご両親のことは常に頭から離れません。
「そろそろまともな仕事に就いて欲しい。」
もっともな言葉です。
でも就職氷河期以降の就業状況や最近のコロナ禍をみれば、まともな仕事って何?
と、問いかけたい気持ちもあります。
しかし、確実にまともでは無いと判っているわが身を思えば、その言葉は慎むべきです。
数年前の統計ですがアニメーターと演出の平均年収は440万円といわれています。
2020年度の日本の平均年収は430万円だそうです。
1億2千万人以上いる平均と数千人ほどの業界の平均年収はほぼ同じです。
主観になってしまいますが、格差の大きさは明らかにこの業界の方が大きい気がします。
行政はなにもできないでしょう。
思うことは色々ありますが、明らかにおかしいと思います。
外に理由を求める前に、できることがあるのかもしれません。
弊社が新しく登記上別会社になって、なんとか1年が経ちました。
リスクを承知で単価の大きな仕事を出してくださった方々に感謝です。
今の仕事を何とか凌げれば、今年後半から更に待遇も改善できると思っています。
リスタート1年目の昨年は、一昨年前よりリスクを取って色々改善や挑戦をしてきました。
今年は昨年よりも更に進めます。今月から実行に移していることもあります。
でも全然足りてないのも分かっています。
まともな仕事に一歩でも近づけるようにすることが僕の仕事です。
その上で、「それだけじゃないんだ」
というのも多少は分かっているつもりです。
この業界のような人生を賭けて挑戦する仕事は、日々自分の力の無さを実感させられます。
大多数の子は、いま目の前にある事柄を完璧にこなし次のステップに行くべきだ。
と考えているように見えます。
そこで行き詰まり、自分の才能やセンスの無さを実感し夢破れる瞬間が訪れます。
でも僕は言いたいのです。
批判や反論を承知でこれは僕の意見です。
アニメーションは技術です。
技術は習得できます。
敢えて僕が思っているだけの数字を書きますが、9割以上は技術だと思います。
(この数字に厳密な意味はありません)
いま行き詰っているポジションで一流になりたければ、必要な技術を習得することに集中するべきだと思うのですが、目指す場所がその先であれば、そこに至る道にある正門を正々堂々と通らなくても勝手口を通ればいいと思っています。
まずは完璧にこなせなくても必要なことを覚え、目指すポジションに行くことだけを考えた方がいいと思います。それでもそこで覚えた技術や経験は必ず後で生きてきます。
そしてその目指すべきポジションで覚悟を決めて必要な技術を習得する。
技術を得るための泥臭い努力は報われる。と思っています。
いまは昔と違ってネットを探せば様々な気付きを得られます。
少し雑な表現ですが、本気でその技術を習得しようと思って、例えば9割近くの技術を習得したとします。
そこまで出来て初めて、圧倒的に超えられない才能やセンスの差を感じるんだと思います。
アニメーションにおいての才能とかセンスとは、そういったものだと僕は思っています。
但し、その技術を身につけた者は既に一流です。
一般に一流といわれる方の言葉としてよく聞くニュアンスが
「自分よりも才能のある人たちは沢山いた。自分がいま評価されているのは諦めずにこの場所に留まり続けたからだ。」
確かドラマのリーガルハイでも似たようなことを言っていました。
技術があっても、足りなくても、面白いワクワクするアニメーションは作れます。
集団で作る商業アニメーションのいいとろこだと思っています。
そんな中で個々が技術を身につけていけば更に面白くなる。
技術≠面白さ
だと僕は思っています。
異論は認めます。
またしても取り留めのない文章を上げてしまいました。
願わくば技術と向き合うことに集中できる環境を作れるようになりたいです。
まともな仕事にしたいのです。
文責
桜栗英人